放射線の測定器の不確かさが大きいのはどうしてですか?

測定器の特性を理解して活用しましょう。
測り方に加えて測定値の解釈も重要でしょう。

原発事故後の現存被ばく状況での放射線防護のカテゴリーの記事は、保健福祉職員向け原子力災害後の放射線学習サイトに移行中です。

「測定誤差範囲 ±30%以下」とカタログでは示されています。
値は信頼できるのでしょうか?
較正されている測定器を使うと正しい値を示しますか?

校正場では正しい値を示します

較正されている測定器は、較正した標準場では許容できる不確かさを伴うものの、正しいと考えられる(=許容できる不確かさ内の)値を示します。
しかし、それ以外の場では、正しい応答を示すとは限りません。

測定器の応答の構成要因

線量計は、検出器が放射線から受ける作用の強さを測定し(=相互作用量を計測している=検出器の特性にも依存する)、その情報を処理して表示する道具です。
検出器の組成や形状、動作原理や、信号の処理の仕方が異なれば、基準場以外では、同じ放射線を受けても、必ずしも同じ値を表示するとは限りません。
残念ながら、組成や形状や動作原理の違う検出器に同じ特性を持たせることは原理的に困難です(=そもそもヒトを検出器と考えた場合が実効線量になるが、ヒトと同じ応答特性を持つ線量計は存在しない)。
このため、ISOやJISではある程度の幅を持った基準を規定しています。
特性が一致していなければ、較正場と異なるエネルギーのガンマ線を測定した場合に、応答が変わりますので、ISO(国際標準化機構)やJIS(日本工業規格)では許容幅が規定されています。

基準場と測定する場の違い

線量計は標準線源を用い散乱線が少なく、それが制御された場で較正されています。
この様な場では測定器の種類による指示値の差が制御されます。
それに対し、測定する放射線場の特性が異なると、検出器の種類や電気的な設定で大きな(=1割を超えるような)差が出ることが考えられます。
特にγ(X)線の散乱線は低エネルギー側に連続スペクトル状の分布になると考えられますので、検出器の構造による物理的な要因と電気的に設定されているエネルギーのカットオフレベルにより大きな差が出てくる事が予想されます。
このため、除染効果の検証には同じ機種の測定器を用いて行うのが有益だと考えられます。
同じ種類の測定器が使えない場合には測定する場の特性に応じた補正をすれば、より不確かさが小さい推定が行えます。

整列拡張場と地表降下線源からの放射線場の幾何学的な違いが線量計の応答に及ぼす影響を検討した例

一般公衆を対象としたガラスバッジの諸特性

放射線計測の特徴

放射線の放出が確率的現象

決まった量の放射性物質があっても、単位時間当たりの崩壊数は確率現象です。
結果として、単位時間当たりの検出器への入射数はポアソン分布に従います。

放射線の計数の原理も確率的な機序を利用

検出器に入射したうち、数えられるかどうかは、確率的現象に従います。

放射線は相互作用で検出

放射線は検出器との相互作用で検出するので、検出器の特性や放射線粒子の種類に(場合によっては大きく)依存します。

放射線計測の不確かさは測り方に依存

例えば、測定器を保持する体が散乱体になりえます。
このため、較正場と異なる放射線場では、応答が異なります。

信号を増幅している

少ない相互作用量から信号を得る場合には、偶然変動の影響を受けやすくなります。
このため、例えば同じ結晶を検出器に使っている場合には、結晶サイズが小さい方が低線量で応答が見かけ上高くなることが考えられます。
偶然変動の影響が人口サイズに依存する

照射線量率標準ガンマ線源の不確かさ

放射線測定器を較正する照射線量率標準ガンマ線源であっても、それなりの不確かさとなっています。

個人線量計の不確かさ

直読式の個人線量計の積算線量

±15%(JIS Z4312)

直読式の個人線量計の線量率

±20%(JIS Z4312)
最小測定レンジ
±30%(JIS Z4312)

参考資料

不確かさの入門ガイト

測定値の変動が取り上げられている例

文部科学省.福島県内で一定の放射線量が計測された学校等に通う児童生徒等の日常生活等に関する専門家からの第2回ヒアリングの配布資料
渡邊明氏提出資料 (PDF:1275KB)

エネルギー補償型とは?

エネルギー補償とは何ですか

測定器のエネルギー応答特性を補正することです。
エネルギー応答特性とは、エネルギーを変化させた場合の測定器の応答の変化のパターンです。
ヒトを検出器と考えると、ヒトもあるエネルギー応答特性を持ちます。
それと全く同じ測定器であれば、ヒトへの線量を考えると、エネルギー応答特性は不要です。
そうでない場合は、エネルギー応答補正をすると、不確かさを小さくできます。

線量は相互作用量

これらは線量測定が相互作用量の計測であることによります。
相互作用量とは照射する放射線の特性だけでなくそれを受け取る側の性質も線量に影響を与えるということです。

何故、エネルギー補償をするの?

エネルギー補償は検出器の応答特性を考慮して、評価したい線量を場のエネルギー分布に関わらず大きく変動しないようにしています。

どうやって、エネルギー補償をするの?

(1)エネルギー別の放射線の計数分布から線量を求める。
(2)シンチレーション式サーベイメータでは低いエネルギー領域で応答が上がってしまうので、低いエネルギーのγ線をシールドして検出器に到達しないようにする。

エネルギー補償型では応答が小さくなるの?

低いエネルギーのγ線をシールドしているタイプでは、レスポンスそのものは、エネルギー補償型では小さくなります。
つまり、感度と精度のトレードオフの関係にあります。
しかし、きちんと較正されていれば、エネルギー補償のあるなしに関わらず放射線基準場では、ともに正しい値を示すはずです。
応答に違いがあるとすると、
・表示している線量の種類がそもそも異なる
・較正が正しくない
・校正場と測定している放射線場の特性が異なる。
・その他
が考えられるでしょう。

エネルギー補償型なのに、1cm線量当量率[Sv/h]ではなく空気カーマ率[Gy/h]で表示している(測定器がある)のは何故ですか?

1cm線量当量だけでなく、空気カーマも、光子のエネルギーの大きさに応答特性が依存しています。

線量の種類による違いを教えて下さい。

同じγ線場であれば、空気カーマ<実効線量<1cm線量当量になるでしょう(極端に変わった設定だとそうならないことはあるかもしれません)。
1cm線量当量は標準人の実効線量を保守的に見積もるものです。

説明例

福島県

モニタリングポストの測定値と サーベイメータなどの測定値の違いについて

東京都

小型放射線測定器(DoseRAE2)と TCS-166 との測定値の違いについて

国立市

測定器に値づけられている線量が異なることを丁寧に説明されています。

日立アロカ社

GMサーベイメータに関する基礎的な説明例です(pdf file, 111kB)

具体的な例

科学館員の独り言
航空機内でも同じ原理に基づく現象が観察されます。
左側はGMで右側はCsIを検出器として使っています。
Cs-137やCo-60の標準場では同じような応答を示しますが、航空機内では応答が一桁異なっています。

GM計数管が放射線の粒子(光子や電子)を数えるのに対して、シンチレーションサーベイメータは放射線の線量を測れるのですか?

GM計数管は電子雪崩で増幅するので、入射エネルギーによらず電離イベントを計数します。
それに対して、シンチレーションサーベイメータは、放射線が検出器の素材を励起させることにより生じる発光量を計測し、信号としてとらえる発光量が放射線のエネルギーに依存していることが、GM計数管との違いです。
発光した回数だけではなく発光量情報が得られるので、入射した放射線の数をエネルギー別に計数することが原理的に可能です。
もっとも、エネルギー応答特性があるという観点では、GM計数管と同じです。

線源から離れても値が小さくなりません。

値の安定を図るために時定数を大きくした測定器では、高い放射線場から離れた時の指示値の低下速度が遅くなります。
逆に、線源に近づいても値の増加がゆっくりです。

どのようなデータが信頼できますか?

どのような量を計測しているか明示している。

線量の例

1cm線量当量(周辺線量当量、個人線量当量)、70 μm線量当量、空気カーマなど

計測している空間線量率が何かを説明している例

中野区の空間放射線量の試測結果等について

不確かさが表示されている。

測定の幾何学的条件が明示されている。

検出器の方向依存性に考慮されている。

サンプリング方法を明示している。

土壌であれば、どの深さを採取したか。

検出限界が明示されている

較正法が明示されている

ただし、校正場と測定場の放射線特性が異なると、較正された装置でも正しい値を示すとは限りません。
校正場よりも低エネルギー放射線の混入が多い場では、検出器の応答特性がより効いてくることがあります。

検出器の性能が明示されている

計数効率曲線などで、測定する放射線場に特性に応じたエネルギー応答補正などが説明されている。

謝辞

この項の記述ではNPO法人放射線安全フォーラムの支援を受けました。

参考資料

放射線の正しい測り方

文部科学省 日本原子力研究開発機構

放射線測定に関するガイドライン(pdf file, 1.9 MB)

国民生活センター

比較的安価な放射線測定器の性能

dose meter(個人線量計)をdetector(放射線測定器)として用いてもよいのですか?

個人線量計では、後方散乱を含む場での1cm線量当量などを計測するような値付けがなされています。
その線量計を用いて、後方散乱がない場で周辺線量当量を計測する場合に、値付けがし直されています。
個人線量測定協議会による環境モニタリングサービスの説明

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