ま行

名目リスク係数(デトリメント調整リスク係数)
detriment-adjusted nominal risk coefficient
(一般に低線量・線量率の曝露を想定した場合の)デトリメントで調整した単位放射線量あたりのリスクの大きさ。デトリメントで調整とは、放射線(により)誘発(された)健康イベント(健康に関する何らかのアウトカムを生じさせる事象)を重篤度で重み付けすること。例えば、同じ致死性発がんでもがんの種類によって平均余命短縮の期間が異なるので、それを考慮すること。この考え方に基づき、組織加重係数が決定されている。このため、個々の放射線曝露での個人のリスクを、この係数で計算するのは、厳密には正しくない。
なぜなら、性別や年齢により単位放射線量あたりのリスクが異なるにも関わらず、仮想的な集団全体の平均値を用いているからである(性別、年齢階級別に係数が推計されている例もある)。つまり、これらの係数は標準的なヒトを仮定したものと考えられるが、この表現は誤解を招くおそれがあると専門家からは指摘されている。
また、放射線の種類は放射線加重係数で考慮はされているものの、同じ種類の放射線であっても線量率が異なると生物学的な影響の度合いが異なる可能性がある。さらに小さい線量でも同様に生物学的な応答特性(2ヒットを起こす割合が1ヒットを起こす割合と比べて十分に小さい)から生物学的な影響の度合いが異なる可能性があると考えられている。
これらを、線量線量率効果と呼ぶ。リスク係数の算出では原爆被爆の線量線量率効果係数に対し、低線量・低線量率のリスクを半分と仮定している。
このように精緻なリスク評価という観点からは、この係数を用いることは明らかな限界がある。
もっとも、このモデルは仮定のお話で、現実がどうなっているかの推定の不確かさが大きい。
また、そこまで細かく考慮することによる意志決定の質の向上は限定的であり、個別のリスク係数を用いることは実際的ではない。
いずれにしても、不確かさが大きいので、名目リスク係数を用いたリスク推定は集団で用いる場合でも目安に過ぎない。
このように不確かさが大きいことはICRPも強調しているが(publication 103 73項)、臨床医にとっても推計に不確かさが付きまとうことは理解できるのではないだろうか。

低線量・線量率の確率的影響の名目リスク係数(10-2Sv-1)
がん 全集団:5.5 成人:4.1
遺伝性影響 全集団:0.2 成人:0.1
合計 全集団:5.7 成人:4.2

放射線防護では、全体の致死リスク係数を約 5%/Svと仮定することがある。

メロディ(学際的欧州低線量イニシアチブ)
Multidisciplinary European Low Dose Initiative (MELODI)
欧州の放射線研究を行っている機関が協力し、結果を放射線防護体系に資することを目的として組織された研究協力基盤(プラットフォーム)。ヨーロッパにおける低線量影響研究における高度専門家グループ(High Level Expert Group on European Low Dose Risk Research [HLEG])により、その構築が提案された。米国DOE低線量プロジェクトやわが国などでの取り組みとの連携も模索されている。長期的な展望を扱っているのが特徴。
これに対して、Low Dose Research towards Multidisciplinary Investigation (DoReMi:ドレミ)は、多分野による低線量研究における情報交換基盤である。
酒井一夫先生による解説.安全研究(放射線影響分野)の国際動向と今後の課題
記事作成日:2010/02/23 最終更新日: 2016/02/19