さ行

残存線量あるいは残留線量
Residual dose
The dose expected to be incurred after protective measure(s) have been fully implemented (or a decision has been taken not to implement any protective measures.(出典はICRP 111))回避しても(あるいは回避策を選択しなかった場合の)受ける線量。災害時に介入するかどうかは、残存線量(+イベント発生時から受ける線量)や回避線量(=介入により低減できる線量。この量が小さく、介入が新たな問題をもたらす場合には、介入が正当ではないことがある。)も考えることになる(原状復帰を目指すことが当然としても現実的な限界もあるので)。
実効線量
effective dose
放射線の種類による生体影響(=放射線加重係数で調整)と臓器の放射線感受性(=組織加重係数で調整)を考慮した線量。単位はシーベルト(Sv)。
放射線防護のために用いることを想定している(=算出のための係数は仮想的なものである。例えば性差を考慮していない)。
放射線に曝露した個人のがん誘発確率を評価するには、実効線量ではなく、臓器又は組織の吸収線量が必要であるとされる[ICRP 103, 157項]。
放射線診療を受けた患者のリスク推定では、できれば吸収線量を用いることが推奨されている[ICRP 103, B220項]。
このサイトでのリスク推定は、ラフな見積もりを与えることを目的としており、放射線防護の質の見通しを与えるとする[ICRP 103, B231項]の記述に沿っている。
きちんとしたリスクの推計は、個々の臓器・組織の吸収線量をもとに、曝露状況や評価対象者の特性に応じた係数を用い算出する必要がある。
しかし、複数の臓器が放射線に曝露する場合に、異なる状況をそれぞれの臓器・組織別の曝露で比較するのは現実的ではなく、まとめた指標で比較したいという現場のニーズは高い(例えば心臓核医学検査と心臓血管造影検査、心臓X線CT検査などの放射線リスクをそれぞれラフに比較する場合)。
なお、もっとも曝露する臓器の平均吸収線量が100 mGy以下である場合には、その診療が適切なものであれば、思春期前の小児科の臨床を除いては、そもそもリスクが小さいことから、線量の最適化を図る意義は限定的であるが、わが国では各医療機関で工夫を凝らしているのが実情である。
主要価値類似性モデル
salient value similarity model
問題に関心がある場合に信頼を得るためにはメッセージ発信者との間に問題への表象の共有が条件と考えられるモデル。問題への表象とは、心の中に形成されるその問題に関するイメージのこと。
それに対し、従来の信頼性獲得モデルとされてきた、伝統的信頼モデルは、能力や公正性(まじめさや立場の公正さ、リスクにさらされる人たちへの思いやり)を重んじるもの。
生涯リスク
lifetime risk
放射線などに曝されたことにより疾病を発症する確率。観察期間は生涯としている。「放射線のリスク」はこの確率で示されることが多い。高齢者の場合には観察期間が相対的に短くなることもありリスクは小さくなる。
シーベルト
Sv
放射線の単位。実効線量、等価線量、線量当量で用いられる。
シーベルトは人名。
正当であること
justification
放射線防護の3原則で最初に示される。残りの2つは最適化と線量限度。放射線利用は受ける不利益よりも利益の方が大きくなければならないというもの。放射線診療でも重要な原則だと考えられている。
線量線量率効果
dose and dose rate effectiveness factor: DDREF
同じ種類の放射線であっても線量率が異なると生物学的な影響の度合いが異なる可能性がある。さらに小さい線量でも同様に生物学的な応答特性(2ヒットを起こす割合が1ヒットを起こす割合と比べて十分に小さい)から生物学的な影響の度合いが異なる可能性があると考えられている。
これらを、線量線量率効果と呼ぶ。リスク係数の算出では原爆被爆の線量線量率効果係数に対し、低線量・低線量率のリスクを半分と仮定している。
線量当量
dose equivalent
防護量(安全基準)としての実効線量(1cm線量当量)や皮膚等の等価線量(70 μm線量当量)を評価するための実用量(=測定に用いる量で防護量を仮想的に表現している)。測定器の値付けに用いられる。単位は実効線量や等価線量と同じSv(シーベルト)。単位が同じなのは、実効線量や等価線量を推計するための量であるからである。単位が同じで混乱するという意見もあるが、次元が異なるわけではなくSI単位の考え方からはいたずらに単位の種類を増やすべきではないとも考えられる。また、どのような量であるかを明示すれば混乱は防げるとも考えられる。1cm線量当量は防護量としての(=放射線防護の基準として用いる)実効線量を推計するのに用いられる。実効線量ではなく、わざわざ1cm線量当量を使うのは、実効線量の評価が困難であったからである。このため、球やスラブを仮想して、線量計を線量当量で値付けしている。最近はボクセルファントムをコンピュータ上で作り、ある放射線場に標準人がいた場合の実効線量を精度よく推計できるようになったので、線量当量の意義は小さくなった。もっとも、民族によって標準人は異なるので、結局、球やスラブで値付けする線量当量が生き残るかもしれない。新しいICRPの勧告では放射線加重係数も変わったので、ある放射線場に標準人がいた場合に受けるであろう実効線量が変化したので、線量当量の標準がこれから変わるかもしれないが、実用量のあり方そのものの検討がICRUで開始されており、JAEAの遠藤章さんが次回会合に向けての宿題に取り組んでいる。【この項の記述はNPO放射線安全フォーラムでの第18回放射線防護研究会での情報に基づきます】
線積分線量
dose length product
X線CT検査での線量指標の一つ。もう一つの指標はCTDI(CT dose index)。CTDIは、X線ビーム幅範囲内の1回転あたりのCTDIは生体を模擬した円柱のビーム内局所の平均吸収線量を模擬したもの。X線管球が1回転する間に生成する断層像の数で補正している。断層数が2だと、CTDIは半分になる。生体を模擬した円柱に4つの線量計を挿入し、より平均吸収線量推計の精度を高めたものがCTDIwであり、横断面内の線量分布の不均一さを少し考慮してる。DLPは、管電流で正規化されたCTDIwをスキャンシーケンス分、積算したもの。縦断的な要素を加味しているので、曝露量としての実効線量とも関係づけられる。例えば、EUROPEANGUIDELINES ON QUALITY CRITERIA FOR COMPUTED TOMOGRAPHYのChapter 1のAppendix IにあるTable 2 Normalised values of effective dose per dose-length product (DLP) over various body regions。DLPはIEC60601-2-44:2009からIECでも規格化された。
線量限度
dose limit
リスクを制御するための限度値で制御しやすい線源に適用される。公衆(実効線量として1 mSv/y)と職業従事時衆(実効線量として100 mSv/5yただし50 mSv/yを超えない。年等価線量としては、眼の水晶体150 mSv、皮膚500 mSv、手および足500 mSv)、緊急作業従事時(実効線量として100 mSv、等価線量量としては、眼の水晶体300 mSv、皮膚1,000 mSv、)がある。放射線事故時の避難対策を取るべき線量やラドン対策を講ずべき線量はこれよりも高い。これらの違いはダブルスタンダードでは決してなく、状況に応じた目標上限値である。
組織加重係数
tissue weighting factor
臓器の放射線の感受性を示す。実効線量は、各臓器の等価線量を組織加重係数で重み付けて平均したもの。前は荷重と表記されていたがloadではなくweightingなのでICRP 103の翻訳版から加重になった。
記事作成日:2010/02/21 最終更新日: 2015/07/01