IAEA(国際原子力機関)が実施した国際的な研究により、いくつかの国ではX線CTで小児患者が受ける放射線が過剰であることが明らかになりました。
専門家が、これらの小児は成人患者の設定による照射がなされていました(同じように放射線を照射すると、小児が受ける平均吸収線量は成人に比べて大きくなります(この説明は、 下にあります)。

このIAEAの研究は、アフリカ、アジア、東ヨーロッパの58の発展途上国の128の医療施設で実施され、15歳未満の患者さんが受ける線量やCT検査が行われる頻度の変動が大きいことを見いだしました。

IAEAの放射線安全専門家でこの研究を担当したDr. Madan Rehani は、「この研究は小児を対象にしています。何故なら、小児はより放射線感受性が高く、より余命が長い(=放射線のリスクが相対的に大きくなる)からです。成人の照射パラメータを小児のCTで用いると放射線の線量を増加させ、それは長い眼で見ると放射線誘発発がんのリスクの増加をもたらすことになるのです。」と語りました。

この研究では6カ国の11のCTセンターは小児患者に成人と同じ照射条件を用いていたことが判明しました。
Dr. Rehani は、このような誤りは、操作者の意識の欠如によるものであると説明し、画像だけでは線量が過剰であることを見いだしにくいことを付け加えました。

「CTでは、線量が過剰であったとしても画像は問題なく、むしろ画質はよく見えるのです。ここが、アナログ画像と異なるところです。アナログでは線量が少し多すぎるだけで画像は黒くなってしまいます。だから、線量が過剰であったことに気付けたのです」

この最新の研究は、IAEAが現在進めている、各国での患者さんの放射線防護の意識を改善しようとする取り組みの一つです。

医療による電離放射線利用は、現在、人類への放射線曝露源としてもっとも急速に増大しています。「多くの利用は、リスクより便益が勝っています。」とDr. Rehaniは語ります。しかし、彼は不必要な放射線照射は「避けるべきです」と強調します。

CTは、X線を利用し、三次元で臓器や血管を描出する手技で、医療での画像作成や診断に大きな進歩をもたらしました。しかし、CTスキャンは従来のX線検査と比べて、比較的高い線量を患者さんに与えるために、懸念されてもいます。

IAEA´s Radiation Transport & Waste Safety Divisionの部長であるEliana Amaral氏によると、欧州委員会と連携して開催された最近のIAEAのワークショップで必要のない放射線検査は一般的であることが明らかになったそうです。「必要のない放射線検査は、世界中で人々に不必要な放射線による負担をもたらすでしょう。このため、放射線診療を便益を最大にするために、各手技での放射線使用が正当であることを確かなものにしなければならないのです」と彼女は語りました。

この新しい研究では、地域で患者さんが受ける放射線の量が大きく異なることが見いだされました。
国際的、地域的、あるところでは国での診断参考レベルが設定されています。
IAEAのプログラムの目的は患者さんが受ける線量がこの範囲に収まっているかどうかを検出することです。

Dr. Rehaniによると、発展途上国での別の問題は、利用可能なCT装置が古いモデルで、新しい装置にあるような自動照射制御を持たないことです。
この制御機構は患者のスキャン範囲の厚みを計測し、線量を最適化し、不必要な線量を避けることができるのです。

「この研究では、CTから照射される放射線の強度は適切であっても、操作者がスキャン範囲を必要な程度を越えて大きくするために患者が過剰な線量を受けることを見いだしました。
装置の調整だけではなく操作者のスキルも同様に重要なのです。研修と意識を高めることが不可欠です。」とDr. Rehaniは語ります。

さらに、この研究ではアジアや東ヨーロッパに比べてアフリカでは、よりCTの利用頻度が多いことがわかりました。この理由として、Dr. Rehaniは、MRIや超音波など電離放射線を使わない他の画像機器が利用できないことや一部のCTが不必要なのに実施されていることを原因として考えられるとしています。

しかしながら、この研究では希望の持てる結果も得られました。
小児患者に成人の照射条件を用いていた11のセンターは全て、IAEAの調査結果から学び、改善させ、今ではこの問題に取り組んでいるのです。

「私たちはそれぞれ国でプロジェクトのカウンターパートに成人の条件で小児を検査している結果を伝え、その結果前向きな反応が得られたのです。放射線の線量は減りつつあります。従って、これは関心を高め。照射条件を正しくする進行中の取り組みなのです。」とDr. Rehaniは語ります。

近年、IAEAは米国のImage Gentlyキャンペーンとも強調しています。
Image Gentlyで2008年に始められたもので、小児の画像診断のうちとりわけCTに注目した放射線安全関係の連合体です(わが国には、 医療被ばく研究情報ネットワーク(仮称)がある)。

連合体の議長のMarilyn J. Goske氏は、IAEAとの連携が始まって日が浅いが、「これまでに、多くのことが成し遂げられました」と語ります。

Cincinnati Children´s Hospital Medical Centreの放射線科教授であるGoske氏は、こう加える。「私たちのミッションは、強く結びついているのです。私たちはともに患者さんの放射線防護を目指していて、特に小児に関心を持っています。私たちは、患者の家族に子供の画像診断検査のことを説明し、放射線のことに関心を持ってもらうことがとても重要だと信じています。」

IAEAの患者の放射線防護ユニットは、小児の放射線防護のネットワークを構築し、保健医療関係の専門家だけでなく患者にも提供する情報を生産しています。情報は、IAEA´s Radiation Protection of Patients (RPoP) websiteから入手できます。

欧州で進行中の疫学研究

EPI-CT – International pediatric CT scan study
EPI-CT: design, challenges and epidemiological methods of an international study on cancer risk after paediatric and young adult CT

結果

Trends and patterns in the use of computed tomography in children and young adults in Catalonia — results from the EPI-CT study


わが国の取り組み

日本医学放射線学会、日本放射線技術学会、日本小児放射線学会

小児CTガイドライン−被ばく低減のために−

FAQ

Q.「100kV 撮影の際は 0.63 倍する」の意味を教えて下さい。
A.実効線量の大きさに関して、120kVに比べて、100kV 撮影の際は 0.63 倍するとあるのは、他の条件は同じで管電圧のみを120kVから100kVに下げた場合についてだそうです。実効線量は37%減ることになります。

日本放射線技術学会


第30回放射線防護分科会 「オールジャパンで考える小児医療」(2010年4月10日)(pdf file, 1.4 MB)

図書紹介

”Managing Patient Dose in Computed Tomography”

ICRP Publication 87 (2001)
Don’t step on it – unless it’s really needed
 本書を紹介する前に、皆さんに一つの問題を考えてもらいたい。まず、頭の中に20 cmの厚みを持ち縦横それぞれ20 cmの立方体の物体を思い浮かべよう。隣には、厚みが10 cmの同じような直方体がある。これらには水が詰まっている。これをヒトの親子のモデルと考えて頂きたい。次に、断面積が1cm2のよくコリメートされたX線ビームを思い浮かべて頂きたい。このX線ビームは、単色でそれぞれの光子のエネルギーを80keVとしよう。簡単にするために、このX線の水の半価層は10cmとする。ビームのフルエンス率は、1秒間あたり2百万個/cm2としよう。人体への入射面のビームの強度を空気カーマ率で表現すると、30 mGy/min程度となるだろう。さて、このようなビームが照射された場合、親子の平均吸収線量率はどうなるだろうか?親では、入射した光子の1/4が透過する。透過しなかったのが全て体内にエネルギーを与えると仮定すると、そのエネルギーは1秒間あたり2百万個×80keV×3/4[keV]になる。従って、照射領域内の平均吸収線量は、(2百万個×80keV×3/4)÷20[keV/g]となるだろう。一方、子には入射したうちの半分が透過する。つまり、体内で失われるエネルギーは、親が子に比べて1.5倍多い。同様に計算すると照射領域内の平均吸収線量は、(2百万個×80keV×1/2)÷10[keV/g]となる。比較すると、照射領域内の平均吸収線量は、子が親に比べて1.3倍程度多くなる。また、体全体の平均線量を考えるとそれぞれ1/400倍になる。この結果から、同じ放射線場にあっても、体格によって曝露量が異なることが分かる。
 さて、本題のX線CT装置では、患者被ばくの指標とすべき量をどのように設定するかが未だに議論されており、その標準化の道筋をつけることが急務となっている。この議論の背景の一つが、X線CT検査件数の急激な増加である。これらの放射線照射の最適化が図れているかどうか、あるいは、検査の適応は妥当かなどが懸念されている。特に小児患者でのX線CT検査の問題はアメリカでは社会問題化した。これらの懸念が単に杞憂であれば、X線CT検査の被ばくの最適化の議論は不要である。被ばくリスクを心配する他科のスタッフや患者に対して、認知の偏りを正すようなアプローチを取りさえすればよい。
 しかし、何らかの対策が必要だと感じるあなたには、本書(あるいはまもなく発行されるであろう日本語版)を読むことをお勧めしたい。本書には、X線CT検査における患者被ばくを制御するために必要な思想や知識が詰まっている。最初に要点が簡潔に記された後、本書が発行された背景、線量の大きさ、患者被ばくを制御するための検査適応の検討を含む様々な手法やそのための新しい技術の進歩について記載されている。内容はコンパクトで本文は40ページにも満たないが、X線CT検査の適切なあり方を考える上で必読であろう。
 なお、これまでの医療被ばく関係のPublicationと同様、本書に関する教育用スライドセットがICRPのホームページよりダウンロード可能である。病院内での教育訓練に合わせて活用するのもよいだろう。
価格: 9,530円
出典:医療放射線防護.36号

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国内最大規模の小児病院でのCT被ばくの低減

国立成育医療センターによる“adaptive CTDI”

日本医学放射線学会

小児の胸部写真撮影に関するご案内

日本小児放射線学会

相田典子.小児画像診断にかかわる医療従事者に伝えたいこと

公益社団法人 日本放射線技術学会

平成24年度学術調査研究班

『我が国の小児CTで患児がうける線量の調査研究』(研究責任者:竹井 泰孝)
我が国の小児CTで患児がうける線量の実態調査アンケート

日本放射線技術学会東北部会第13号


CT分野. 座長集約. 「小児のCT撮影条件の考え方」. -大人と同じ条件で小児を撮影していませんか?-. 仙台赤十字病院 放射線科 安彦 茂(pdf file, 92kB)

韓国政府の取り組み

소아 방사선 촬영을 위한 기술정보(小児放射線撮影のための技術情報(韓国語の資料です)、technical information for infant radiation(pdf file, 1.4 MB))

放射線医学総合研究所

放射線防護研究センターシンポジウム

(WHO協力センターシンポジウム)“子どもと放射線”開催のお知らせ

IAEAの取り組み

DS399 – Radiation Protection and Safety in Medical Uses of Ionizing Radiation

エネルギーによる違い

あまりに低いと造影剤や目的とする物質がなくても人体内を透過せず、画像に役立たない。

低エネルギーをカットするフィルタが重要

あまりに高いと、造影剤や目的とする物質で十分にエネルギーを失わずに、検出器に到達し、画像に役立たない。

高い光子を発生させないようにすることが有利(=高すぎる管電圧は不利)

造影剤に含まれる核種で失いやすいエネルギーを利用することは画像作成上有利(吸収端を利用)

エネルギーが異なる単色光子を用いられるとよいはず

WHO

WHO 小児画像検査と被ばくのリスクコミュニケーション手引き

記事作成日:2010/08/26 最終更新日: 2016/11/25