クリアランスレベルの測定

Q.バックグラウンドの変動の3σを超えなければ、有意ではないと考えればよいのではないですか?

Q.バックグラウンドの変動の3σを超えなければ、有意ではないと考えればよいのではないですか?

A.クリアランスレベルに関する測定では、
・クリアランスレベルを超えていないのに超えていると判定する。
・クリアランスレベルを超えているのに超えていないと判定する。
という二種類の誤りを制御する必要があります。

「バックグラウンドの変動の3σを超えなければ、有意ではない」というのは、前者の誤りを小さくしようという考え方です。

しかし、放射線安全管理測定で求められるエラーの制御は後者の誤りです。

このため、その測定が十分な検出感度を持っていることを保証することが重要になります。

Q. 主な寄与核種がCo-60,Eu-152であるコンクリートでサンプル表面での線量率が8nSv/hを超えていないことが証明できれば、クリアランスレベルが下回るとできるとありますが、1時間で8nSvだと1日で0.2µSvになり、50日で10µSvを超えるのではないでしょうか?

A. サンプル表面での線量率が8nSv/hを超えなければ、それを廃棄した場合の廃棄物由来の線量が1年間あたり10µSvを超えないことが示せることになります。
その廃棄物をずっと胸に抱えるというシナリオは非現実的なので想定する必要がありません。

Q.通常の環境でも時定数を考慮して線量率を測定すれば、クリアランスレベルを下回ることを示せるのではないですか?

A. BGの線量率が64nSv/hであるとすると、見落としを0.1%にするには、BGとサンプルの測定をそれぞれ52回以上行うことが必要になります。

しかも、この測定ではそれぞれの値が正しく読み取れることが前提になります。
粗い読み取りしかできない場合には、クリアランスレベルのサンプルの見落としが否定できません。

Q.試料を大きくすると放射線は検出しやすくなるのですか?

A.濃度が均一の試料では、試料サイズを大きくすると、放射線を検出しやすくなりますが、その効果には限界があります。
単純に考えるために円盤状の線源を考え、その中心で放射線を計測してみましょう。
円の半径を増加させた場合の円の面積の増加は、半径の倍になります。
増えた面積から検出器に飛んでくる単位放射線放出あたりの放射線の量は、距離の二乗に反比例します。
従って、円の面積を増加させた場合の計測する放射線の数は半径の逆数に比例します。
これを積分すると対数になります。
この計算から、試料サイズを大きくすることには限界があることが理解できます。
自己吸収が考えられる場合には、さらにこの効果が大きくなり、図に示すように半径50 cmでほぼ9割程度に飽和します。

実際には、大きなサイズの試料では遮へい体としても働くために、試料測定中の計数値が大きくならないことがあるために、遮へい体としての試料を考慮してバックグラウンドを評価することがあります。

Q.測定にコストをかけると放射線管理上全く意味のないわずかな汚染を検出し、混乱することになるので、感度のよくない測定法を放射線管理では採用すべきではないですか?

A.過剰なコストをかけて放射線管理することは適切ではありません。しかし、感度を下げた測定は、第1種の過誤を小さくするものの、第2種の過誤を大きくします。第2種の過誤を十分に小さくしておけば、第1種の過誤をさらに小さくするというのはバランスの取れた考え方ではありますが、安全性確保の観点からは、できる範囲で精度よくデータを得ておくことが望ましいと考えられます。
単に第1種の過誤を小さくして、見かけ上、NDにするという対応は、表面的であり、本質的ではありません。
むしろ、ごくわずかな検出値の意義を正しく解釈するリテラシー能力の向上が求められます。

参考

GMサーベイメータでの10分間計測例

surfaceは試料A、depthは試料Bである。前者はクリアランスレベルを超え、後者は超えません。
BGは、202 count/10 minであり、低BGにしています。
低BG環境でも、GMサーベイメータではクリアランスレベルを超えないことの証明は困難ですので、NaI検出器などを用いる必要があります。

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記事作成日:2010/07/16 最終更新日: 2013/09/27