治療用加速器施設の遮へい計算の理解のために

よくあるFAQをまとめてみました。
国立保健医療科学院の医療放射線監視研修ではこのような問題も扱います。

Q. 放射線施設のしゃへい計算実務マニュアルの10 MVのリニアックの例で、T=12時間/月とした場合、トータルで12時間を超えなければ、最大で1月間に、下12時間、上6時間、横それぞれ3時間以内の照射してもよいですか?
A. トータルで12時間を超えなければ構いません。
遮蔽計算では、線源から見える面は、利用線錐による照射照射ヘッドからの漏えい線量の加算で評価しています。
「方向利用率」は、それぞれの面に対して、利用線錐による照射時の漏洩線量を評価するために用いられます。
照射ヘッドからの漏えい線量は、全ての照射に関して考慮されます。
最大で下12時間、上6時間、横それぞれ3時間ビームを出しても利用線錐方向の線量は、限度を超えないことが担保されています。
従って、トータルで12時間は超えなければ照射ヘッドからの漏えいや迷路散乱中性子の線量も線量限度を超えていないことを担保することができます。

方向利用率が、下:1、上:0.5、横:0.25である場合に、全体で1+0.5+0.25だけ照射できるとして、上向きの最大では1/(1+0.5+0.25)の割合で照射できるという理解は誤りです。
ここでの方向利用率は、許可された使用時間に対し、それぞれの方向にどれだけの時間照射しうるかを示すものです。
つまり、一般的な「率」(=速度)の定義とは一致しない用法となっています。


Q.方向利用率とは何ですか?
A.最大照射方向の方向利用率を1として、その他の方向の一次ビームの照射時間や照射した線量を、最大照射方向に対する比で示したものです。
最大照射方向に対する相対的な利用割合がしゃへい計算マニュアルで示されている方向利用率です。


Q.遮蔽ヘッドからの漏えい線量は、照射方向別に求める必要があるのでしょうか?
A.照射ヘッドからの漏えい線量は、各方向で照射ヘッドの位置が異なることから、方向別に求めることにしています。


Q.放射線施設のしゃへい計算実務マニュアルの10 MVのリニアックの例で、ヘッドからの漏えい線量でビームが評価点方向に向いていない場合に、ヘッドからの漏えい線量を考慮していないのは何故ですか?また、患者さんからの散乱線を考慮していないのはどうしてですか?
A.いずれも無視できるからです(ちなみに、基になった医学放射線学会の指針では、他の方向照射分は利用方向分のみ線量を加えて安全評価するという思想で、それはそれでわかりやすい。しゃへい計算実務マニュアルの5-6注は、一次ビームとヘッド漏えいの両方を合わせて1になるようにすることを示しており、一次ビーム方向ではヘッドからの漏えいを無視するという考え方になっている)。


Q.10 MeV以上のリニアック施設で、コンクリートと厚い鉄を組み合わせている場合の安全評価では、どのような考慮が必要ですか?
A.このような複合遮蔽では、鉄での中性子シールド能が相対的に低いことだけでなく、鉄の光核反応を超える光子が鉄に入射することを考慮し、中性子や捕獲γ線の発生とそれらのシールドを非安全側にならないようにする必要があります。


Q.最大で下12時間、上6時間、横それぞれ3時間出しても、トータルで12時間は超えていなければOKとありますが、少しでも超えてはならないのでしょうか?
A.壁方向の一次ビームは、その条件で計算しており質問の状況は想定内になります。一方、照射ヘッドからの漏えい線量や迷路散乱X線や中性子線は、どのように考えて評価しているかに依存します。具体的な場合で計算されてみてはいかがでしょうか。


Q.回転照射する場合、方向利用率を設定するのがよいでしょうか?
A.寝台に垂直なある面で360度回転して照射する場合には、床、左壁、天井、右壁への照射を考える必要があります。
回転中心から見える角度で床が最大であれば下向きを1とし、その他の面は、それぞれが見える角度の大きさを相対的に表現すればよいでしょう。
もっとも安全側になるのは、全ての面を1とすることです。
全ての面を1とすると過剰な防護となり、そのコストの増加が容認できない場合には最適化を考えることになるでしょう。

関係資料

日本放射線腫瘍学会 Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology

診療用高エネルギー放射線発生装置の放射線障害防止法・医療法に基づく放射線管理の徹底に関する報告書

記事作成日:2010/02/05 最終更新日: 2013/04/01

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