広汎性発達障害と放射線感受性

これまでの研究では自閉症の方の放射線感受性が高いという知見は得られていません。

Q.
自閉症(軽度)の障害があり、脳波にも異常がある次男の呼吸器症状が悪化し、頭痛を訴えるようになり嘔吐もしたので、総合病院へ行き内科医の指示でCTを受けました。
検査で異常がないことが確認され、呼吸器症状が改善したら頭痛はなくなりましたが、放射線のことが心配です。
総合病院で、放射線の影響は何も説明がありませんでした。
とても心配です。将来何か影響がありますか?


A.

ご心配があれば医療機関に相談を

一般に、頭部X線CT検査による放射線被曝による放射線障害発症のリスクは、あまりにも小さく、検査法の決定にあまり影響を与えないため、省略されたのかもしれません。被曝の影響について、ご心配な場合には、医療機関の担当者にお尋ねされるのがよいでしょう(一般的な相談であれば、保健所などの行政機関を利用することもできます)。

自閉症と放射線感受性

自閉症の原因はよくわかっていませんが、おそらくいくつかの要因が関係した高次認知機能の発達の障害により、コミュニケーションの障害や特異的な関心領域が生じていると考えられているようです。「脳波にも異常」とあるのは、これだけでははっきりしませんが、何らかの脳の機能的な働きの特徴が捉えられた結果なのかもしれません。最近では、放射性物質などを用いた検査法によって、その病因に迫ろうとする研究も積極的に行われているようです。

放射線障害は細胞の複製のための情報損傷が原因で、細胞の複製のための情報損傷の修復能や細胞の寿命などの違いにより、放射線への抵抗性は異なると考えられます。

しかし、これまでの研究で、少なくとも、自閉症児において、細胞の複製のための情報損傷の修復能が低下しているという知見は得られていません。

このため、お子さんが「自閉症(軽度)であるために、他のお子さんよりも放射線影響を受けやすいとは考えがたいと思われます。

検査で受けるリスクは限定的

頭部X線CT検査による実効線量が2 mSvであるとして、将来の発がんのリスクの相対的な増加分(頭部X線CT検査による被曝がなかった場合と比較して)は、過大に見積もっても1万分の2程度に過ぎません。
放射線誘発がんによる寿命短縮を30年と仮定すると、放射線曝露による平均寿命短縮は最大でも約3日(30年×1万分の2)となります。また、リスクと便益の比較では今もたらせる便益に比べると将来のリスクは割り引かれるでしょう。いずれにしても、そのリスクは検査がもたらす便益に比べると事実上無視できるでしょう。
ただし、このように実効線量を用いてリスクを見積もることは不確かさが大きすぎるなどとして専門家によると適切ではないとされています。あきらかに推定の限界(=リスクを過大に見積もっている可能性があること)がありますが、臨床医であれば、この限界はセンスとして身につけているでしょう。

記事作成日:2010/04/26 最終更新日: 2013/09/27