faq_m

時定数って何ですか?

2010 年 2 月 23 日

正しい応答が得られるまでの時間の目安です。
最終指示値に対して時刻tでの応答は、時定数をτとしたとき、
1-exp(-t/τ)
で与えられます(τ時刻での応答は最終指示値の63%になる)。
測定対象量が細かく変動している場合にサンプリング時間が短い場合には、時定数を小さくしないと、サンプリング時間内の応答が正しく得られません。
サンプリング時間内で測定対象量が一定の場合には、サンプリング時間に対応して時定数を長くした方が変動を小さくできます。
このように時定数の設定はトレードオフの関係にあるので最適化が求められます。

平均計数率が一定と見なせる場合の観測される計数率の標準偏差

1/(2×平均計数率×時定数)1/2
導出はGlenn F. Knoll. Radiation detection and measurement
初版p.550-552
第二版p.650-553

線量の種類は色々あるのですか?

2010 年 2 月 21 日

頭のエックス線CT検査を受けました。

エックス線CT検査として、
・40mGy
・1mSv
という値を提示されました。
どちらが正しいのでしょうか?


値が大きい方を用いるべきじゃないかなあ。
その方が安全側ぽいし。

線量の種類が異なっておるのじゃ。

どういう風に?

40mGyはエックス線ビームが直接あたった頭の部分の線量じゃ?
1mSvは全身での線量の受け方を示しておる。
強いビームがごく局所にあたるのと弱いビームを全身に受ける場合を統一的に扱おうとしておるのじゃ。

リスクの評価は?

各臓器に受けた放射線の量を基に各臓器でのがんのリスクを考えてそれを全体で合算することがお勧めされておる。

面倒だね。

単純には実効線量を用いればよいじゃろ。
ただし、年齢によってリスク係数は最大で数倍異なっておる。

そんなの薬の影響と同じで臨床医は当然考慮するじゃん。
あまり複雑な指標を使ってもしょうがないと思う。
ところで、よく200mGyを超えなければOKって聞くけど、
5回、エックス線CT検査を受けたら、駄目と言うこと?

そんなことはない。
200mGyは、それだけの線量であれば事実上リスクは無視できるということで用いられておるようじゃ。
放射線診療は、多少リスクがあっても、有益性がそれを上回れば行うが合理的じゃ。
また、ここでの200mGyとは低線量の上限という意味で用いられておるので、実効線量である200mSvと考えてよい。

リスクが無視できるって本当かなあ。
きちんと疫学調査したらリスクを検出するんじゃないの?

かなり難しい話じゃ。
バックグラウンドでのがん死亡リスクが10%の集団で、
放射線の過剰リスクが10%/Gyであるとすると、
検出力80%、有意水準5%を確保するために必要な標本サイズは、
線量が100mGyの場合6,400人とされておる。(ICRP Pub.99)

検出力ってなあに?

真の差をきちんと見つける確率じゃ。
80%だと10回疫学調査すると2回は本当にある差を見つけられん。

有意水準って何だっけ。統計の授業で聞いた気もするけど。

本当は差がないのに間違って差があるとする確率を5%以下にするということじゃ。

100個の研究があると5個も間違えちゃうのか。
なんだか疫学はいい加減だなあ。

例を示そう。
原爆被爆者における固形がん罹患率:1958-98 年
Radiation Research 第168 巻、2007 年7 月号
の表9じゃ。

5-100mGyだと過剰発症割合は81/27,789=0.3%じゃ。

なかなか微妙なデータだね。

この差を検出するのは事実上不可能じゃ。

やはり疫学研究の意義は乏しいのじゃないかなあ。

そんなことはない。
不確実性に伴う限界をきちんとわきまえて使えば有益な情報が得られる。
皆さんも質のよい疫学研究への協力依頼があったときには是非前向きに検討されてくだされ。

NICUの医師や看護師が受ける線量

2010 年 2 月 20 日

新しい部署での仕事はどう?
少しは慣れたかな。

赤ちゃん相手に頑張っています。

何で異動になったの?

NICUがセンター化されて稼働割合があがったみたい。
スタッフの負担が増えたので、集められたのよ。

スタッフ全体で支えておるのだな。

放射線部の技師さんも毎日、ポータブルエックス線撮影に来るのよ。

保育器の赤ちゃんを検査の度に放射線部まで連れて行くのは大変そうだもんね。

検査の時には、鉛の防護エプロンをしているのよ。
NICUのはデザインもなかなかよいと思うけど、ちょっと心配なことがあるの。

何が心配なの?

鉛の防護エプロンは胸とお腹しかカバーしていないのよ。
でも、検査の時には赤ちゃんを手で抑えているの。
だから、手に放射線があたっていないかちょっと心配なのよ。

赤ちゃんのX線写真にお姉ちゃんの手が写っていなかったら、放射線にもあたっていないということなんじゃないの?

ちと、それは甘いかなあ。
最近は画像はデジタルなので、保存する画像はトリミングされておる。端は切り取られるので、保存された画像だけで判断するのはよろしくない。
指の線量は簡単にモニターできるので、付きそう回数が多ければ、線量計を付けるのもよいのではないかな。

放射線モニタリングって、管理区域の中だけで十分なんじゃなかったっけ。

でも回数が多いのよ。

大分県立病院のNICUに1994年1月から1999年9月に入院した2,408 症例を対象にした調査は、ELBWI-a児では入院中にNICU内で平均して約26回のX線検査を受けていたことが明らかになっておる(*)。
エックス線診療室以外でもNICUなどでは、相当量の検査が行われているのではないかな?

エックス線室以外でも放射線を出してよいんだ。

病室でポータブル撮影することもあるわ。
でも件数は一日だと病棟全体でも百件程度と少ないみたい。
厚生労働省からは、在宅でのX線検査も大丈夫って通知があるって院内勉強会で習ったわ。

線量はどの程度になるのかな?

新生児胸部X線での入射表面線量は0.2mGy程度だろう。

直接線が手指にあたったとすると、
1日5件で1mGy/日、
1週間で5mGy/週、
3月間で65mGy
年間だと260mGyか。

手指の年間の線量限度は500mSvだから、その半分程度にとどまるようだな。

mGyとmSvで単位が違うみたいだけど。

皮膚の線量限度は等価線量で与えられておるから、単位はmSvになる。

等価線量と吸収線量はどう違うの?

等価線量は臓器全体の平均吸収線量に放射線加重係数をかけたものだよ。

エックス線だと放射線加重係数は1だよね。
だとすると、局所の線量と平均の線量の違いか。

安全側に評価していると言うことになるが、放射線部の人以外は気にしなくてよいと思う。

一回の線量が0.03mGyという病院もあるみたい。

必要な画像情報を得ることが前提だが、必要最小限の線量でよい画像を得ることが現場で競われておるようだな。

指針作りはどうしたらよいのかな?

同じような性格の医療機関でも病床あたりのポータブル検査数は大きく異なり、
ポータブル検査の適用そのものが医療機関で大きく異なっている実状にあるようだ。

病院のつくりが効いているのかなあ。

人間関係で決まっているという話もあるみたい。

まずは、ポータブル検査はどのような場合に行って、
それぞれのスタッフがどのような役割を担うかを率直に話し合って決めてはどうだろうか。
それすら決まらないのであれば、そこから先の話をきちんとするのは難しいんじゃないかな。

どうでもよいリスクにこだわっても仕方がないと思うけど、その観点ではどうなの?

年間、10μSv程度だと、例えちょっとの工夫でさらに線量が減るとしても、そのような対策を考えることそのものの意義がとっても乏しい。
病棟勤務しているスタッフに対して、月1回のポータブル検査だと2mの距離で年間の線量が10μSvに届かないことを示して、それ以上の対策は特に積極的に推奨しない(必要がない)ということを放射線部から示してはどうかな。

その提案にどう答えるかで放射線部がどの程度信頼されているかが計測できそうね。
今度の看護学会のネタにしようかしら。

(*)Ono K, Akahane K, Aota T, Hada M, Takano Y, Kai M, Kusama T.Neonatal doses from X ray examinations by birth weight in a neonatal intensive care unit.Radiat Prot Dosimetry. 2003;103(2):155-62.


Q.成人した自閉症の子を持つ精神科医です。
小児科にローテイト中の研修医の時に、妊娠数週時に病院で当直していて、保育器の中のbabyの症状が悪化したので、X線検査が必要になり、上司の医師に命令され、その時少し症状を感じていた自分の体の事を言い出せないまま、防具を掛けてその医師と二人がかりでX線を撮りました。

1,000gの未熟児の胸の写真を撮る線量なので小さいに違いないものの、
防具をしているとはいえ、こんな近くで放射線を浴びるなんて、大変な事だったのではないかと、妊娠が分かって冷や汗かきました。

その1週間後にも同じようなエピソードがありました。
ウィークデーの日勤帯でしたので、診療放射線技師が勤務しており、
X線の検査のオーダーすると、昼休みの時間帯に診療放射線技師がNICUまで来て、レントゲンを撮ってくれるのですが、業務が多忙だったので、
技師さんが来ているのに気がつかず、無防具で機械から5mくらいまで近づいてしまって、「ピンポーン」(レントゲンを撮ったよ、という機械の音)に気づき、しまったと思いました。
技師さんも、困るナーという感じで顔をしかめていました。
この撮影条件も、一回目の被ばくの時と同じ条件なので、線量は小さいと思うのですが、
その後、子どもに何かがあると、つい妊娠中の事と結びつけて自分を責めてしまいます。

教えていただきたいのは、上記のような状態で受けた線量が5週や7−8週の胎児に与えるリスクは、どのくらいかという事です。
X線が自閉症のリスクになるかは定説はないかと思いますが、浴びた線量の危険度をよく知らぬまま日々の生活に追われ今日まで来てしまいました。

何となく、このことを分からずじまいにしておかないで、専門家の意見を聞いて、正しい認識を持ちたいです。

ざっくりしたおおまかな計算でも結構ですから、およその事でも良いので、お教え下さると助かります。

A.
妊娠中や新生児の被ばくは、比較的お問い合わせが多いこともあり、放射線の量のデータはよくとられています。

NICUでのBabygram radiographで使われる放射線の量は、babyに入射する位置で多めに見積もっても2mGy程度(空気の吸収線量ですが、体での吸収線量と見なしても大きな違いはありません)と少ないとされています(通常はもっと少なく、この1/10程度)。

ELBWIだと通常は、0.15mGy程度で多くてもその5倍程度とごくごくわずかです。

一方、babyから散乱して介助者に放射線の量は、比較的エネルギーが小さいエックス線が用いられることもあって少なく、5m程度離れると、上の線量の 2E-05に過ぎません。

従って、最大の見積もりでも、20nGyに過ぎません。

普段の生活で受ける外部被ばくの線量率は、今、私の手元の線量計で60nGy/h程度なので、20分間程度の線量分になります。
これは、労働者を保護するための線量計では検知できないレベルです(このレベルでも放射線管理用の測定器では検出でき、医療機関では、定期的に確認され放射線管理されています)。

また、介助時の線量は、腹部が防護衣をされているとのことですので、過大に見積もっても2μGyに過ぎません(防護衣がなくても、その10倍程度なので、よほど繰り返して介助業務に従事しない限りは大きな線量にはなりません)。

曝露する量としては極めて小さいので、各事例でのリスクの評価には至らないレベルです。


Q.第二子の妊娠を考えている看護師です。
RI検査をした患者さんの病棟での介助業務に夫が心配しています。
上司が心配ないと言っていると伝えていますが、納得していないようです。
どうすればよいですか?

A.その業務でどの程度の放射線を受けるかは放射線部がきちんと評価しています。
患者さんに投与する放射性物質の量は厳格に制御されており、その周囲に滞在することによる線量もよくわかっています。
管理区域から退出する時の患者さんの周囲の線量率は十分に低くなっているので、放射線安全教育での注意を守ればリスクは十分に小さいです。
データは放射線安全の研修の資料にあるはずなので、それを夫に見せるのはいかがでしょうか。
院内のルールはみんなで納得して決めるとよいでしょう。

簡単な計算例

実効線量率定数は、1MBqあたりの線源から距離1mでの実効線量率[µSv/h]を示す。

実効線量率定数[µSv/h m2 MBq-1]
核種 実効線量率定数
99mTc 0.0181
201Tl 0.0142

出典はアイソトープ手帳

例えば心筋シンチグラフィで200MBqの201Tlが患者さんに投与されているとすると、
患者さんから1mの距離での線量率は、
0.0142[µSv/h m2 MBq-1]×200[MBq]÷1[m2 ]=2.8[µSv/h]
となる。

この線量率は、地上での自然放射線レベルの40倍程度で、飛行中の航空機内程度。
1時間の滞在で3[μSv]程度となる。
年間で自然に受ける放射線量は2.4[mSv]程度なので、線量の増加は1%程度。

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画像の例

Galvanised by a respiratory distress diagnosis

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谷 正司・田辺智晴・阿部修司・三原一博,FCRを用いたNICU病室撮影における 胸部経過観察と撮影条件の最適化

放射線施設で生成されるオゾンは安全ですか?

2010 年 2 月 14 日

Q.放射線で空気中に生成されるラジカルは危なくないのですか?


空気中に生成される物質

空気中には放射化物以外にもオゾンや二酸化窒素が生成されます。

これまでの安全管理の考え方

医療用電子加速器でのオゾンや窒素酸化物生成の管理に関しては、30MeV以下の電子線であれば特別な配慮は不要とされてきました[1]

生成されるオゾン濃度の推計

改めて生成されるオゾン濃度を推計してみましょう。
加速器でのオゾン生成のG値(単位電離エネルギー(100[eV])あたりの生成量)は、6 molecule/100 eV [2]7.4-10.3molecule/100eV [3]、とされています。
装置の線量率は、治療用加速器のビーム内を2.8Gy/minとし、照射時間は、全国の医療機関の使用承認時間の中央値104時間/3月であることから、1日照射時間を96minとすると、その空気カーマは、268.8Gyになります。
空気の密度は、1.2kg/m3ですから、G valueを 8 molecule/100 eVとすると、生成オゾン濃度は、1.3E+23 molecule/m3となります。
従って、加速器運転中のオゾン生成率は52μl/m3/minになります。
運転時間比を0.2とすると、平均のオゾン生成率は10μl/m3/minになります。
ここで、換気回数を10回/1時間とし、オゾンの分解時間を5時間とすると、オゾン除去(拡散+分解)実効時間は約6分となることから、ビーム内のオゾン濃度の定常値は60ppmとなります。室内全体を考えると、ビーム外の生成量は3桁以上低いため、0.1ppmは超えないと考えられます。

参考情報

事故事例

四本圭一「オペレーターの心得?」Isotope News 〔No.653〕2008年 9月号

拡散サンプラーを用いたオゾン測定法

Uchiyama, S.; Otsubo, Y. Simultaneous Determination of Ozone and Carbonyls Using trans-1,2-Bis(4-pyridyl)ethylene as an Ozone Scrubber for 2,4-Dinitrophenylhydrazine- Impregnated Silica Cartridge. Analytical Chemistry 2008, 80, 3285-3290.
Uchiyama S, Inaba Y, Kunugita N. A diffusive sampling device for simultaneous determination of ozone and carbonyls.Anal Chim Acta. 2011. 691(1-2):119-24.

家庭用オゾン発生装置

国民生活センターからの情報提供

[1]医療用加速器使用室遮蔽計算指針委員会. 医療用高エネルギー加速器使用室に対する遮蔽計算指針,日医放会誌、28,622−634,1968

[2]http://www-ps.kek.jp/jhf-np/hadronbeam/technical_report/hblproc/node87.html

[3] http://www.slac.stanford.edu/cgi-wrap/getdoc/slac-pub-2470.pdf

医療機関で気体の放射化物のリスクを気にする必要がありますか?

2010 年 2 月 14 日

Q.中性子で気体も放射化すると思うのですが、危なくないのですか?


空気の放射化


加速器の運転に伴い発生する中性子などにより、空気が放射化されることがあります。空気の放射化は内部被ばくや外部被ばくを引き起こします(サブマージョンによる曝露もある)。
そのリスクは法令に基づき制御することが求められることから、施設中の空気中濃度限度や施設外への排気中の濃度が法定限度を超えないように管理方法をあらかじめ決めておく必要があります。

空気中に生成される放射化核種による放射線の線量の評価


そこで、医療機関でよく使われている加速器の使用に伴う中性子による空気中の放射化アルゴンの生成とその被ばくの放射線管理ルールの整備の必要性を明らかにするために、空気中に生成される放射化核種による放射線の線量の評価を試みました。

安全評価の対象者

・加速器施設の作業従事者や一般職員
・加速器を設置している施設に隣接している公衆

Ar-41の生成量評価

加速器使用に伴う空気の放射化で考慮すべき核種は、既存の放射線管理マニュアルに記載があります 。
エネルギーや光核反応を起こす核種などに依存しますが、生成されうる主な核種は、
N-14(n,2n)N-13
O-16(n,2n)O-15
O-16(n,p)N-16
Ar-40(n,α)S-37
Ar-40(n,p)Cl-40
Ar-40(n,γ)Ar-41
が考えられます(10MeVを超える高いエネルギーの治療用加速器のビーム内では光核反応による生成も相対的には大きくなる)。
医療用小型加速器の場合に、この中で線量に最も寄与するのは、アルゴンの放射化です。
空気中のアルゴンは主として(n,γ)反応により放射性のAr-41となります。
空気を容器に密封するだけで小型サイクロトロンのターゲット付近ではAr-41が検出されるので計測は容易です。
加速器室のエリアモニタを解析すると、Ar-41生成量を推計することができます。
Ar-41の空気中濃度限度は、作業環境と一般環境のそれぞれに対し定められています。作業環境で1×10-1 [Bq/cm3]で、一般環境では5×10-4 [Bq/cm3]です。
作業環境のAr-41は作業従事者のサブマージョン被ばくに関係し、それを一般環境に排気することにより一般職員や公衆が曝露します。

文献をもとにした検討

医療用小型加速器の使用に伴って発生するAr-41の濃度を測定し、濃度限度との比較を行っている発表 [1], [2] を検討しました。ターゲット付近では、0.62×10-1Bq/cm3であったとされます。これでも、作業環境の法定管理基準は下回っていますが、排気の許容基準に比べると120倍程度になっています。また、ターゲット側面から1 m 離れた場所では、室内濃度限度に対しては0.07倍ですが排気の基準に比べると14倍程度になっています。小型サイクロトロン運転室内では排気濃度限度の10倍程度のAr-41が検出されることがあります。しかし、排気中の濃度は希釈効果により十分に濃度限度を下回ります。
また、アルゴンを400mmHg封入した容器を用いるとあらゆる加速器で空気中のAr-41が検出できるとされていますが、治療用リニアックでは1Gy中、中性子による線量は、ビーム中心で2.5mSv、照射野の端から20cmで0.55mSv、50cmで0.37mSv、50cmで0.22mSvとわずかであり(もっとも中性子の線量は、条件、加速器等による異なる)、ビーム中心での照射中の中性子フルエンスは4.7×105/cm2に過ぎず、通常の治療用加速器では空気の放射化は無視できます。
なお、この文献では、この論文ではフィルターでAr-41が除去できるように記載されていますが、それは妥当ではないと思われました。

計算による検討

空気の放射化による空気中放射能濃度は、次式により導けます 。
R = λ / (λ+α) * N Φ σ[ 1 – exp { - (λ+ α) t } ]

R : 空中放射能濃度 ( Bq/cm3 )
λ : 崩壊定数 ( min -1)
α : 室内空気排出率 ( min -1 )
N : 原子密度 ( atoms cm -3 )
Φ : 中性子束密度 (n cm -2 sec -1 )(中性子以外の反応ではその放射線粒子の)
σ : 反応断面積 ( cm2 atom -1 )

室内空気排出率は換気要因で決定されます。
濃度を低下させるには換気が有効です。
上述の資料では排気の方法のひとつとして、連続強制排気が挙げられています。
例えば1時間に10回空気を入れ換えるとすると、濃度は1/10に低下させることができると考えられます。
また排気をする前に治療室を密封した状態で加速器の運転後にAr-41を減衰させた後、排気をする方法も記述されています。
(高エネルギーの加速器施設では、放射化空気の施設外漏えいを防ぐために、通常は、室内を陰圧にするために、室内空気の排気運転が行われているそうです。ただし、この方法は排気中の放射能濃度を低減させるには有効ですが、室内物品の腐食を引き起こすことがあり、ここでもトレードオフ問題になるそうです(加藤和明先生のご教示による))
例えば、午前8時に運転が終わった場合には、翌日の午前5時には、濃度は3×10-4 程度に減衰します。

公衆への影響

排気されたAr-41の公衆への影響は、集団被ばく線量を計算することにより評価できます。
集団被ばく線量は、大気拡散モデルなどを用い、空気中の濃度を求め、それを個人の線量に換算し、それに曝露人口を掛けることで計算できます。
その結果から、大型加速器施設に比べると、医療用ベビーサイクロトロンから環境に放出されるAr-41の寄与が小さいことが理解できます。
もっとも、大型加速器施設から排出されるAr-41は厳格に制御されており、公衆のリスクを過度に上昇させることを前提に許認可が与えられていることは言うまでもありません。


江戸川区内の医療機関のサイクロトロンを仮定した場合の空気中濃度分布推計例
濃度[pSv/y]集団線量[Sv・人/y]
江戸川区7.3E-014.6E-07
東京都7.6E-029.8E-07


加速器施設の評価例
加速器施設主要加速器集団実効線量[Sv・人/y]
東北大学原子核理学研究施設電子リニアック3.5×10-3
高エネルギー物理学研究所電子リニアック9.6×10-3
東京大学原子核研究所サイクロトロン6.4×10-3

光核反応による空気の放射化

しきい値が15MeV以下の反応はN-14(γ,n)N-13とAr-40(γ,n)Cl-39
その飽和放射能は単位ビーム出力(kW)、空気中の光子放射線の飛行長さあたり
N-13: 520×106[Bq m-1 kW-1]
Cl-39: 1.5×106[Bq m-1 kW-1]
出典:表8.24 8-4. 放射化 (2) 空気の放射化(中村尚司.放射線物理と加速器安全の工学)
15MeVと高いエネルギーの医療用リニアックでのN-13の生成を安全側に考えて計算した例(ラフな見積もりの計算です)
壁までの制動放射の飛行長:3m
飽和放射能係数:5.20E+08 Bq/m/kW
出力:10 kW
とすると、
4π方向にビームが照射した場合(非現実的ですが、テキストのデータがこの想定なので)
生成量: 1.6E+10 Bq(=5.20E+08×10×3) (部屋を球と仮定)
生成濃度:1.4E+02 Bq/cm3
となる。
ビームが絞られていることを考慮し、この濃度になる範囲を1m3とし室のサイズを180m3とすると平均濃度は0.8Bq/cm3となる。
日本医療福祉設備協会「病院空調設備の設計・管理指針 HEAS-02-2004」では、放射線部門の換気量については、各治療室や操作室いずれも、外気量2回/h、全風量6回/hとされていることから、5時間の運転を考えると、平均濃度は0.03Bq/cm3となる。
以上から、N-13の空気中濃度は0.2Bq/cm3なので、十分に安全側に推計してもその1/10となることがわかる。

[1] 吉村 厚、上原周三、大崎 進、坂本弘巳、入江聖義.小型サイクロトロンより発生する中性子による空気中40Arの放射化.RADIOISOTOPES,42,325-329,1993

[2] 坂本弘巳、吉村厚、上原周三、入江聖義、泉隆、齋藤高志.医療用加速器より発生する中性子の検討.九州大学医療技術短期大学部紀要.20,7-10,1993

リニアックでの中性子のデータ

Out-of-field photon and neutron dose equivalents from step-and-shoot intensity-modulated radiation therapy

空間の線量

The calculated risk of fatal secondary malignancies from intensity-modulated radiation therapy

臓器の線量(論文ではリスクも推計されている)

Calculation of effective dose from measurements of secondary neutron spectra and scattered photon dose from dynamic MLC IMRT for 6 MV, 15 MV, and 18 MV beam energies

空間の線量

臓器の線量と実効線量

Investigation of secondary neutron dose for 18 MV dynamic MLC IMRT delivery

二次中性子のエネルギー分布

(注) Lethargy:減速中性子エネルギーの対数減衰率(= lnE0/E)あたり(=横軸の一目盛りあたり)

文部科学省放射線安全規制検討会放射化物技術検討WGでの検討

気体状・液体状の放射化物の取扱いに関する調査
10MeV照射での測定結果には慎重な解釈が必要だと思われる。

ISO TC85/SC2

新たな課題として、病院で用いられている医用加速器の施設における空気モニタリングの規格を策定することについて、国内メーカーに新しい規格の必要性について意見を聞くことになった。
(出典:米原英典.国際標準化機構(ISO)TC85/SC2(原子力/放射線防護)会合出席報告.保健物理.45(3),302-303,2010)

ヒトへの健康以外の配慮

CTBT放射性核種探知観測所のような高感度測定されている機関への配慮

I-131投与患者さんからのごく少量のXe-131mも検出しうる可能性がある。

液体の放射化物のリスクは大きいですか?

2010 年 2 月 14 日

Q.サイクロトロンの冷却水は放射化すると思うのですが、危なくないですか?


医療用加速器で放射化しうる液体

サイクロトロン

サイクロトロンの冷却水は、ターゲット用とマグネット用の2系統があります。
いずれも60リットル程度の水を循環させている。この冷却水は、絶縁も兼ねており不純物の混入が厳格に制御されています。より放射化しやすいのはターゲット用の冷却水です。
サイクロトロンでは、他にベビコンやミッションオイルが使われています。
自己遮蔽体にホウ素などを含有した水が使われていることがあります。

治療用加速器

冷却などのために液体が使われていることがありますが、放射化の程度は、サイクトロン施設よりも小さいと考えられます。

冷却水の管理の現状

非密封RIを使用する施設では、管理区域内で発生する排液は、除湿水も含めて、全て、放射性排水設備に一旦集められています。
サイクロトロンを有するPET診療施設は、非密封RIを使用する施設であり、ガンマ線を検出するRI排水モニタが設置されており、排水中のガンマ線放出RI濃度は基準値以下であることを確認したうえで放流されています。
ただし、RI排水モニタの多くは、トリチウムなどのRIは検出できません。

サイクロトロン施設でのトリチウム生成量

そこで、サイクロトロン施設でのトリチウム生成量を評価しました。
冷却水としては、(1)ターゲット冷却水、(2) マグネット、RFシステム及びイオン源冷却水が用いられています。
このうち、より放射化しうるのは、ターゲット冷却水です。

推定の前提

ターゲット冷却水は、通常は、定期的には交換されず、蒸発に伴う減量を補って循環されています。
ターゲット冷却水は、絶縁体としても用いられており、イオン交換水などが使用されています。
不純物の混入は電気伝導度で確認されており、その存在は無視しうると考えられます。
従って、HとO以外の元素は考慮しなくてよいと考えられます。
また、放射化に主に関与するのは中性子だとするとN-13などの生成も考慮不要とできます。
この前提で放射化物の生成量を推定しました。
なお、ビームロスは無視し生成される中性子は、O-18(p,n)F-18のみによるとしました。

結果

Dの同位体存在比を0.015%とすると1gの水の中のDの数は 1.0×1019となります。
F-18の生成量を1×1011Bq/日とすると、その生成されるF-18の個数は、F-18の半減期が109.8分=6588秒であることから、崩壊定数は1.1×10-4なので、9.5×1014 個/日となります。
従って、生成される中性子数は1×10 15個/日程度になると考えられます。
冷却水は中性子生成箇所よりも離れており、入射する中性子の割合は、その一部に過ぎません。
ここで、運転時の熱中性子束密度を2.4×10 08[cm-2 s-1]程度とし、運転期間4年4か月で、週に4回、1回につき1時間運転したとすると、Dの熱中性子捕獲断面積は0.55mbであるので、生成トリチウムは6mBq/g程度になり、排水の濃度限度(60Bq/g)を十分に下回ることになります。
なお、O-16の光核反応による破砕反応でのトリチウム生成は、閾値が25.02MeVなので無視できます。また、O-16の高速中性子によるspでのTの生成も閾値が20MeVなので無視できます(放射線物理と加速器安全の工学 p.413)。

考察

このため、加速器の運転管理が適切に行われている限り、冷却水を放射性廃液として扱う必要はないと考えられます。
これに対して、管理区域からの排水を、放射能濃度の確認なしに一般放流しているとの情報が周辺住民や下水処理場等に伝わると、計算上は問題なくても不安をあおるために、パブリックアクセプタンス上は濃度を委託測定などにより確認して放流しているとすべきという意見が現場からありました。
他方、医療機関からは、
・医療用加速器の冷却水受け皿は、事故が起きた場合を想定して、自主的に作っている。国で何らかのガイドラインを定めるべきではないか。
・ 冷却水は閉ループということもあり、特に管理指針は無い。そもそも、建設関係でも医療機関での放射化の管理指針は全く無く国で何らかのガイドラインを定めるべきではないか。
との意見が寄せられました。
しかし、重粒子線治療施設に関して医療法施行規則改正のために検討された厚生労働科学研究辻井班(重粒子線治療等新技術の医療応用に係る放射線防護のあり方に関する研究)リポートでもその必要性について言及はありません。また、医療現場では、設計時に、施設を何十年か運用した後の放射化量を計算して、IAEA SAFETY GUIDE RS-G-1.7と比較しており、自主基準も整備されています。
このため、ここまでの対策を講じるかどうかは、医療機関と周辺自治体、周辺機関との調整で決定すればよいと考えられます。

参考

ターゲット水

9.6MeV, 25μA,60minで、O-18(p,t)O-16により、10kBq/ml程度のトリチウムが生成されることが示されています。
Ito S, Saze T, Sakane H, Ito S, Ito S, Nishizawa K. Tritium in [18O]water containing [18F]fluoride for [18F]FDG synthesis. Appl Radiat Isot.61(6), 1179-83,2004
この論文では、環境影響が議論されており、放射線防護上は問題ないと結論づけられています。
O-18水を蒸留再生して繰り返し使用するとトリチウムの濃度は増大しますが、毎週2トンの排水で希釈すると排水中の濃度限度(100Bq/g)を超えることは考えられないでしょう。
O-15生成時のトリチウムは東京都老人研佐々木徹さんがご検討されています。
Toru Sasaki, Shin-ichi Ishii, Katsumi Tomiyoshi, Tatsuo Ido, Junko Miyauchi and Michio Senda. Tritium in [15O]water, its identification and removal. Applied Radiation and Isotopes, 52(2), 175-179,2000

 ターゲット水からはH-3以外にV-48,Co-57,Zr-97, Mn-54, Co-56, Sc-46, Zn-65, Na-22が検出できます。ターゲット水にこれらの放射化物が混入する機序は、加速器製造メーカによると、よくわかっていないとされますが、ターゲットへの照射では、ターゲットフォイルを陽子が通過し、ターゲットフォイルに含まれるTiとのTi(p,xn) 反応でV-48が生成され、その際のリコイル散乱などでV-48が選択的に出てくる可能性があるとされています。また、ターゲット水付近は高温高圧になっているため、ターゲット水を格納している金属表面の物質はスパッタリングされやすい状態になっていることから、激しい分子運動レベルでのスパッタリングによりV-48などが選択的にターゲット水中に放出されると考えられるとの説明が加速器製造メーカからなされましたが、チタンの溶解度を考えるとこの寄与は限定的かもしれないません。
Co-57は、チタン合金のNi−58由来(Ni−58(n,np)やNi-58(n,2n)Ni-57→Co-57)、Zr-97はチタン合金のZr-96由来(Zr-96 (n,γ) Zr-97)が考えられることから、3気圧程度のターゲット水が陽子の照射により高温になり気泡が生じ、陽子がターゲット水を透過しターゲット水の容器壁に入射することも考えられました。
V-48の生成濃度を18MeVのサイクロトロン施設から試料提供を受け計測したところ、運転終了から数時間経過後の換算値で10kBq/gでした。ターゲット水の量は約2gなので、生成量は100kBqを超えません。また、減衰を考慮すると5回分の照射済みターゲット水が一事業所に同時に存在することはあり得えません。従って、このV-48は放射性物質として扱う必要はないと考えられます。
 ただし、加速器メーカーでは、ターゲット水は放射化物で適切な処理が必要としており、ターゲット水の取り扱いを十分注意するよう、各医療機関に要請しており、各医療機関では、それに従った管理が行われているのが実情です。このため、過度にならず適切な管理がなされるように指針を策定する必要があると考えられました。
なお、ターゲット水中のV-48は、ターゲット水の性状をモニタリングする指標となりうるかもしれません。例えば、通常の照射でのレベルより回収水内の不純物(V-48など)が多かった場合は、ターゲット内に充填する水の量が少ないあるいは、ターゲット水が沸騰しているなどの現象が想定できると考えられます。

核融合科学研究所

核融合科学研究所での冷却水中でのトリチウムの生成は年間10Bq (濃度は1×10-4(Bq/l))で、下水への排出に伴う環境影響評価もなされています
PET用のベビーサイクロトロンを4年間程度運転するとし、冷却水を1lとすると、冷却水中の生成量は上の計算から6Bq程度となります。
このように、同程度の生成量に過ぎませんので、冷却水中の不純物などに由来した放射化物が生成されるなど想定外のことがおきない限りは、核融合科学研究所の事例と同様に評価でき、問題がないことを示すことができます。

JIRA

JIRAのQ&Aでは、管理区域内の液体はRI排水として扱う必要があるとの見解を述べています。

遮へいにほう素を含む水を用いている場合の排水の安全性確保

排水中の化学物質

排水の環境負荷では放射性物質の量だけでなく化学物質なども考慮する必要があります。
中性子を吸収させるためにホウ素を用いている場合には、ホウ素の環境放出基準も満足させる必要があります。
例えば30tの遮蔽に4%のホウ酸水が使われていて、10年に一度は遮蔽水を排水すると仮定すると、
ホウ素の環境放出率は平均で30t×4%/10y=0.12t/yとなります。
このような医療機関が20箇所あるとすると国内での環境放出率は2.4t/yとなります。
濃度基準として10mg/lを満たすためには、1年間での排出を仮定すると、一箇所の医療機関あたり120ktの排水が必要になります(さらに自治体条例などにも従う必要がある)。

一方、PRTRデータでは年間の水域へのホウ素の排出量は4ktで下水道業からの排出を除くと2.8ktですので、
医療機関由来の寄与は2.4/2.8kと0.1%に達しません。
I-131の環境放出に比べると医療由来の寄与はとても小さいと考えられます。

環境省による関連課題の検討

平成21 年度ほう素、ふっ素、硝酸性窒素等に係る排水基準検討調査(温泉排水処理技術開発普及等調査)

廃棄物としての安全性

Q.中性子遮蔽のためにホウ素を加えた遮蔽体を用いています。
放射化した遮蔽体を日本アイソトープ協会は引き取ってくれるのでしょうか?

A.放射性廃棄物の保管廃棄の委託は今のところ日本アイソトープ協会にしかお願いできません。
しかし、保管廃棄を委託する廃棄物は安全性が担保されている必要があります。
ほう素は土壌環境基準で溶出に関し環境上の条件が定められています。

従って、この基準を満たすことを証明しなければ、日本アイソトープ協会では引き取れません。
ほう素の原料である硼砂は水に溶けるので、硼砂を用いた遮蔽体ではこの基準を満足しないことが考えられます。
一方、炭化ほう素は安定なので、これを用いたコンクリートは廃棄物としての安全性に問題がないと考えられます。

加速器以外の放射化

原子炉・加速器によらない放射化
金沢大学理学部附属低レベル放射能実験施設 小村和久

10-4cm-2s-1 レベルの中性子束が検出可能となっている。

SPECT-CT装置でのCT単独使用

2010 年 2 月 14 日

効率的な医療体制を構築するために、高額機器の有効利用が図れるように規制を合理化することが求められている。この観点から、厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究「診療放射線分野における新たな医療技術等の活用に係る研究(主任研究者:伊東久夫(千葉大学大学院))」で、「SPECT-CT検査時の被ばくに関する検討(分担研究者:油野民雄(旭川医大))」が検討され、その結果に基づき、医政局長通知「エックス線装置をエックス線診療室を除く放射線診療室において使用する特別の理由及び適切な防護措置について」が平成21年7月31日に発出されたので紹介する。
本通知は、PET-CTだけでなくSPECT-CTでもCT単独撮影を可能とするものであり、放射線安全を確保した上で、核医学−CT複合装置等の有効活用を図るための制限が撤廃された。この背景として、核医学と組み合わせて用いられるX線CT装置の高性能化がある。
例えば、MDCT(multi-detector-row CT)による冠動脈血管造影検査(冠動脈MDCTA)は、従来の冠動脈血管造影検査に比べて、患者の負担が少なく従来の検査法を代替・補完する検査法となりつつあるとされている。冠動脈MDCTAと心筋シンチグラフィの重ね合わせは、心筋シンチグラフィの集積欠損部分の責任血管が精度よく同定できることから患者の治療方針決定や治療評価に有益とされているのである。従来の通知でも、核医学−CT複合装置のみならず、核医学検査に用いるMDCTでも、診療用放射性同位元素使用室で用いることが可能となっていることから、今後、SPECT(single photon emission computed tomography)装置は更新できなくても、CT装置を単独で核医学施設内に設置して、同日にSPECTとCTA(coronary CT angiography)などを実施することが想定されている。また、SPECT-CTの高性能化も考えられる。このような状況において、この通知は、医療現場のニーズに応え国民へのよい医療の提供に資するものであると期待される。
上記の研究では、放射線安全面が検討されCT単独検査の患者がSPEC-CTを待つ患者から受ける線量などが十分に小さいことが示された。PET-CTでのCT装置を単独使用に比べると使用核種の半減期が長いことに留意が必要であるが、同等の放射線防護措置で十分であるとされている。
本通知発出にあたっての意見募集では、この研究報告書の考え方に沿い、日本放射線技術学会から本通知改正に賛成するとの意見が寄せられた。また、管理体制面に関して、「医療機関の放射線管理の実務を診療放射線技師が専門職として担っている実態があり、専門的な知識・技術を有している診療放射線技師が放射線管理を担当するのが相応しいこと、加えて臨床医の負担を軽減させるという観点からも、「陽電子—CT複合装置」でのCT単独撮影と同様に、「また、診療放射線技師が診療用放射性同位元素使用室における安全管理に専ら従事することによって、」との文言を追加することを提案します。」との意見が寄せられたが、医師が安全管理者として対応することで安全性が確保されるとして原案のまま通知が発出されている。研究班報告書ではSPEC-CTを待つ患者からの線量を予測することや経験が浅い施設の職員を対象にした研修の必要性が提案されており、放射線安全管理のプロである診療放射線技師のサポートが期待されよう。RIを投与され、SPECT検査待ちで管理区域外にでる患者に由来した従事者や公衆の曝露を考えると、相対的に重要な経路として下水処理場の汚泥経由が指摘されている(ICRP Pub.94 99項など)。また、稀ではあるがI-131カプセルでは嘔吐しうることが添付文書にも記載されており、患者から飛散した放射性ヨウ素では有機化の考慮が求められているが、それらの対応が未だ明確でないように見受けられる。関係者に信頼される核医学の特性に対応した放射線管理が期待されており、クリアランス制度を円滑に導入するためにも医療機関の主任者や放射線管理担当者の横のつながりをさらに深める必要があるのではないだろうか。通知発出のような機会を捉えて、関係業界との信頼関係をさらに築いていただきたい。
今後も、医療技術の進展や診療スタイルの多様化に応じた規制の持続的な見直しが必要であると考えられる。よりよい診療を提供するには、その安全面の確保が不可欠であり、関係学会での質のよい指針の策定や質の検証システムの運用が求められることから関係者の取り組みに期待したい。

出典

山口一郎.核医学撮像室でのX線CT装置の活用と放射線安全.医療放射線防護.56,61-62,2009

RPOPの更新情報(4 Feb 2011)

2010 年 2 月 13 日

The RPOP website has been updated as:

Release of a Reporting system for events in interventional procedures (SAFRAD)
IAEA Cataract studies receive further attention
Training material on Radiation Protection in Pediatric Radiology for FREE Download
Release of patients after radionuclide therapy- Update from NRC (US)
New Network on Radiation Protection of Children in Latin American Countries

Updates on pages:

Computed tomography (patient) ,
Orthopedics,
Cardiology
Gastroenterology

Latest literature

検出限界って何ですか?

2010 年 2 月 9 日

放射線って周囲にあふれているから、管理対象の放射線を見つけるのは結構大変ですね。

施設によっては、自然放射線の1cm線量当量率が150nSv/hを超えることもあるから、これを差し引かないで線量を計算すると、3月間では300μSv以上も過大に評価してしまい、敷地境界の線量限度を超えてしまう。だから、まず測定値を正味の値にする必要がある。

正味の値って何ですか?

正味の値とは、施設の放射線利用による線量の増加分だ。

計測の方法で変わるのですか?

測定で、どの程度の増加分を見つけられるかは、測定の方法や測定器の選択によって決まる。自然放射線の区別できる最小の線量の増加分を検出限界と言う。

検出限界はバックグラウンドの変動で決まるのでしたっけ。

検出限界は、自然放射線の変動の範囲から導き出される。

自然放射線はどうして変動するのですか?

高エネルギーの宇宙線がたまたま降り注いだり、ラドン-222が多量に吸着した微小な煙粒子が漂ってきたりすると、高い線量率になることもある。あるいは、測定者の体内のK-40が観測時間内にまとめて多く崩壊することがたまにあるじゃろ。このため、「変動の範囲を超える」とは、自然放射線を計測していても、その値を超える確率が少ないことを言うわけだ。

自然放射線による変動の範囲を超えるから、管理対象線源からの放射線があるということですね。

でも確率現象だから、その判断が誤っていることがある。誤る確率は有意水準で与えられる。

タイプ1のエラーってあわて者エラーでしたっけ。

本当は、管理対象の放射線がないにも関わらず、誤って自然由来じゃないと判定する確率だから、大きめに設定すると、再検査の手間が増えてしまう。反対に厳しくすると不要な再検査は避けられるが正味の増加を見落とす可能性が増加してしまう。

出た。いつものトレードオフですね。
3σをとっていますって聞くと、エラーを減らしているように思うかもしれないけど、ちょっとリークが増えていても、自然放射線の変動の範囲とみなすことだから、検出限界が気になるところですね。
自然放射線の変動はどう考えればよいですか?

自然放射線計測値の「変動の範囲」は、データの散らばりの程度で決まる。散らばりの程度を散布度と言うが、標準偏差はその代表的なものだ。自然放射線を繰り返し測定することで、自然放射線計測データの分布を得て、標準偏差を計算することができる。自然放射線計測データの分布が正規分布と見なせる場合には、標準偏差とその標準偏差を超える確率などが関係付けられる。

放射線計測だと平均値が分散に等しいって聞くけど、どういうことですか?

ある観測時間に観測される自然放射線の数は、周囲の放射性核種がその時間内に崩壊し、放出された放射線が検出器に入射し相互作用を起こしたものだ。
ここで、検出器周囲の放射性核種の数が、ある観測時間内は一定とすると、計数される放射線の数は、平均np、分散np(1-p)の二項分布に従うと近似できる。
2項分布は、表か裏の2つに1つの事象を繰り返し試行した時の表の数の分布だ。
この例は単純化して核種の種類を一つにして、ある時間内に崩壊する確率がpの放射性核種数が検出器の周囲にn個としておる。
pが小さくnが大きいときには、二項分布はポアソン分布に収束する。
λはnpじゃ。

最初の項は確率変数Xが値kである確率で、次の項は、その確率が観測期間中の期待観測数がλのポアソン分布で事象がk回起こることと等しいのを示しているのですね。
統計で習ったことはここでも役立ちますね。
医療事故の統計解析とも同じだ。

つきつめるとどの分野の問題も原理的には統一されるのかもしれない。
放射線だけが特殊な世界ではないのじゃ。
むしろ普遍的ではないかな。

検出限界を小さくするにはどうすればよいのですか?

自然放射線の変動の程度を小さくすればよいから、
1)周囲の線源を遠ざける。
2)遮へいして低バックグラウンド環境にする。
3)測定時間を長くして偶然変動を相対的に小さくする。
4)測定回数を増やして偶然変動を相対的に小さくする。
5)計数対象の放射線のエネルギー領域を限定する。
などが考えられるだろう。

各標本の平均値から得られる分布の散らばりの程度は標準誤差(=各標本の平均で作られる分布の標準偏差)で与えられるから、複数回の測定の平均値を用いると、より小さな検出限界を得られるということですね。
低バックグラウンドにするにはどうすればよいのですか。

環境放射能測定では、測定器の周囲を遮蔽し測定時間を長くしている。金沢大学では世界でも有数の極低レベル放射能測定設備が旧尾小屋鉱山のトンネル内に設けられておる。この設備には金沢城の建材が遮蔽体として用いられ、検出器も放射性同位体の含有率が少ないものが使われており、自然放射線計数率を小さくするともにその変動を小さくすることで検出限界を高くする工夫がされているわけだ。

核医学分野でコリメータを使うのと同じことですね。
検出限界は、その値が偶然変動では考えがたいという思想から導かれているだけど、逆に、検出限界に相当する量だと、確実に検出されるのだろうか?

検出限界に相当する数量でも、たまたま、計測時間中の崩壊数が少なかったり、検出器との相互作用が想定よりも小さくなると応答数が少なくなる。

放射性核種の崩壊も検出器との相互作用もともに確率現象であることですね。
ということは、これだけあれば、一定の確率で検出されるという量は少し少なくなることか。

丁寧に議論すると、偶然の変動範囲を超える何らかの試料によるシグナルが観測されていると判断する基準は、棄却限界となる。

これだけあれば、何とか検出できるであろう検出限界は、棄却限界よりも大きくなり得ると言うことですね。

同じ正味計数であっても、そのチャンネル毎の計数分布でピークかそうでないかを検出する確率が異なるのであれば、それを考慮してシミュレーションで評価するとよいのではないだろうか。

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1kg生試料に対して、Cs-134, Cs-137でそれぞれ0.4Bq/kg生

緊急時(マリネリ2L)

Cs-137[Bq/kg]

試料名 供給量 計測時間
10分間 30分間 1時間 10時間
陸水
飲料水
牛乳
2L 80 48 32 12
葉菜 1kg 80 48 32 12

用語の説明

棄却限界 critical limit

正味の計数値がプラスであった場合に線源が存在すると考えてよい(=と考えることが合理的とされる)値の範囲の最小値。
放射線源が存在しなくても、バックグラウンドの偶然変動により、正味の計数はプラスになったりマイナスになったりします。
このため、正味の計数値がプラスであったとしても、それが線源の存在を保証するとは限りません。
線源が存在しない場合に、ある正味の計数値が得られる確率を考え、
十分に小さい確率であるにも関わらず、その正味の計数値が得られた場合に、
バックグランドの偶然変動ではない(=何らかの線源の存在を意味する)と考えます。
この限界を棄却限界と言い、確率(=有意水準)の関数で与えられます。
棄却限界を超えない計数は、真の線源に由来した計数であることを否定はできないのですが、
線源がなくても観測され得る値であるために、線源があるとは判断しないということです。
棄却限界は試料がない状態でのバックグラウンドの変動の程度から誘導されます。
棄却限界の計数があれば、バックグラウンドの変動の程度を越えると判定できますが、
棄却限界の計数を示す試料を計測しても、それを正しく正味の計数ありと判定できるとは限りません。

参考資料

上本道久.検出限界と定量下限の考え方(pdf file, 823kB)

外れた値は除いてもよいですか?

2010 年 2 月 9 日

放射線は測っているとたまに大きく針が振れることがあるけど、その時のデータはなかったことにしてよいのかなあ?

外れ値が観測された場合どうするかじゃな。放射線は確率的な現象を計測しているから、条件によっては結構値がゆらぐじゃろ。

きちんとしたデータで考えた方がよいと思うけど。

データをまとめる際に、外れ値の処理に悩むこともあるじゃろ。
社会調査では、入力ミスが外れ値の原因になるから、データクリーニングの必要性が強調されておる。

明らかに外れた値は解析対象から除いてもよいのじゃないかなあ。

都合の悪いデータを除くような恣意的なデータ選択は正しくない。
意図しなくても、測定者が「予測」に合致するデータを指向する傾向があるから、データの扱いは公平にするよう注意しなくてはならん。
その辺、疫学者はとっても厳しい。

値が外れることの原因ってどんなのがあるの?

外れ値(outlier)の原因は、
(1)測定や実験操作上の誤り
(2)データ記録の際の誤記
(3)本来対象としている母集団とは別の母集団からのデータの混入
(4)対象としている母集団にそのような値が含まれるいる。
が考えられるじゃろ。

核医学診療を受けた患者がそばを通った場合に値が大きくなるのは、(4)ということか。

管理区域境界の線量の評価では、患者内の線源からの放射線量を除外してよいとは規定されておらんから、それでよいんじゃないかな。

まとめてください。

外れ値が観測される原因はいろいろあるから、少なくとも明らかな操作上の誤りであることが判明した場合以外は、安易に外れ値を除外するべきではない。理由なく測定値を除外することは情報量を低下させるので推計値の不確かさを大きくする。もしも、その値が理屈に合わないのであれば、その原因を追及すべきではないかな。

(参考文献)
緒方裕光、柳内晴夫(1999).統計学—その基礎と応用—.現代数学社.